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1995年4月に教室開設以来、今年で30周年を迎えた「鈴木美知子パッチワークキルト教室」(主宰:鈴木美知子氏)が主催する作品展が、令和7年9月5日から7日まで「よねざわ市民ギャラリー ナセBA」で開催された。
ギャラリー全室を借り切って行われた今回の作品展は、「ひと針のぬくもり」をテーマに、先生・生徒計29人の作品を一堂に展示し、見ごたえのあるキルトの世界を表現した。アートとしての様式美や優雅さ、シックな色合いとバランスが取れた作品の数々に、キルトの可能性を再発見させるような内容だった。また布の組み合わせを楽しみ、形を考え、ひと針ひと針に心を込めて作り上げた作品には、作者の思いや願い、物語が伝わってくるようだ。
パッチワークキルトはアメリカが発祥で、布が貴重だった時代、針と糸と布という身近な材料や道具を使って、小さな端切れをいくつも繋ぎ合わせたり、使い古しの布に手を加えたりして作る手芸だった。
鈴木美知子氏(米沢市在住)は、これまで山形県美術展での入選11回、入賞2回を始め、キルトジャパンコンテスト入賞9回など、数々の公募展において優秀な成績を収め、現在は公益財団法人日本生涯学習協議会監修・認定 国際キルトインストラクター、さらに財団法人余暇文化振興会認定ミシンキルトワーク教授を務めている。
平成23年に発生した東日本大震災からの心の癒しと復興を願い製作した「愉しい日々」、「穏やかな日々」と題するキルトには、鈴木美知子氏の優しい思いやりの心と創意工夫を凝らした深い感性を感じさせる。
この作品展に合わせて、鈴木美知子氏は自身の作品70点あまりを掲載した本書を発行した。鈴木氏は、前書きの中で、「私にとってパッチワークは単なる趣味ではなく、心の癒しを与えてくれる大切な時間となっています。作品を通して心温まるひととき、楽しさや魅力を共有できたら幸いです。」と述べているが、まさに本書を1ページづつ捲っていくと、心が自然と温まってくる。鈴木氏の研ぎすまされた感性と芸術性によって、キルトの表現の可能性を改めて教えて頂いた感じがしてくる。
それにしても、「針の舞」というサブタイトルは、とても面白い、素敵な表現だと思う。(書評 成澤礼夫)
著 者:鈴木美知子
発行者:鈴木美知子
発行日:令和7年9月5日
価格:非売品